触れる部分から伝わる体温にレイは安らぎを感じて目を閉じた。最近起こるようになった発作に恐怖を感じるのは事実だ。長い間苦しんでいた人を自分は身近に知っている。ゆっくりとしかし確実に人のそれより早くやってくる終わりに蝕まれている。それを知ったときの気持ちをどう伝えようか。望まれぬせいであった自分が生きているのは罪なのだ、と言われた気がした。そんなことは無いと二人の保護者は否定の言葉をくれたがそれでもレイの心は偶に騒ぎ出す。もう少しなのだ。もう少しで彼の、自分の望む世界に生まれ変わる。もう自分のような不要な存在が生まれないで済む。そのためには力が必要だった。自分の持っていない力を持つシンを引き込むのは容易だった。与えられていた愛情を取り上げられて育ったシンは自分を認めてくれる存在を無条件で信頼する。アカデミーで出会ってずっと側に居た。愛情に飢えていたのはお互い同じだったのかもしれない。
(こんなにはまり込むつもりじゃなかった)
発作から逃れるための睡眠から目覚めて直ぐ側に居た彼の存在に確かに自分は安心した。馬鹿みたいに丁寧な扱いで起きるのを助けられる。そのままレイを気遣ってベッドの脇に腰掛けたシンの肩に頭を預ければ常にないレイの行動にシンは驚いたようだったが何も言わずにレイの頭を数回撫でただけで何も言わない。それを有り難く感じて硬い軍服越しから確かに伝わる温もりにただ身を任せた。
END
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2005.09.30-Copyright (C)Baby Crash