ごお、と何処か本能的な恐怖を感じる音を立てて風が吹いてくる。それは天気や温度、勿論風の風力すら決められた世界で生きてきたものにとって其れは異質なものでしかなかった。これが本当の姿なのだと突きつけられた気がした。お前らのソレは偽者だ、と。それなら今まで自分たちが空と呼び風と感じていたものはいったいなんだったのか。答えられるものは誰もいない。唯一レイの疑問気答えてくれそうな人物はつい先ほど艦を降りた後だった。


音からやや遅れて風がレイの元まで届く。想像に違わず強い力で全てを持っていこうとしているようにも思えた。レイの金の髪が空に舞う。地球の空は風と同じでどんよりとした鉛色だった。今の風に色をつけたらきっと同じような色になるのだろうと思う。初めて自分の目で見た地球は余りにも想像と違っていた。それは艦に乗っていた同僚の少年たちも同じだったららしい。先までいた姿はもうないが「スゲェー」「資料と違う」などと騒いでいた声はまだ耳に残っている。




やや無茶な作戦のおかげで不時着のように艦が降りた海を見た。青い色をしていると聞かされたそれは日の光を持たない今似ても似つかない色をしている。彼の髪色にも似ていた。思い浮かべた”彼”がいったいどちらだったのか誰だったのかまでは考えなかった。ただどちらも今はこの艦にいないという事は知っていた。無事だといい。できるならまたあえたらいい。思いながら手元の銃の確認をする。暫く出来なかった射撃の練習をしようと外に出た。それで冒頭の風に話が繋がる。今の世界ではレイがよく知るものは手元の銃だけだった。スッと常の通りに銃を構えると目線の先には見慣れない海ではなく士官生時代から見慣れた人を模った的が見えた。引き金を引く前に一瞬目を瞑ったのは風が吹いたからで感傷に浸ったわけでは決してない。













4:37

END



勢いのままに書き逃げ。

【灰色の海と風と空】


2004.11.23-Copyright (C)Baby Crash