この場所は優しい。






















ニコルは慣れない艦内を歩いていた。 気を抜けば引っくり返ってしまいそうな低重力に今だ慣れていない。
新しい軍服。窓の外に流れる暗闇。
見るもの触れるもの。全てが新鮮だった。




軍に志願した。
大切なものを守りたい。それだけだった。


いろんな物を失うことになるのだろう。そう覚悟していたのに。






「アスラン!貴様、もういちどいってみろ!」
「だから言ってるだろ。アレはイザークが焦りすぎた」




角を曲がるころに聞きなれてしまった声が聞こえた。 ここに来てから聞かない日は無い声。


自然に笑みが漏れる。


ああまたやってる。




いろんな物を失うことになるだろう。そう覚悟していたけれど。 実際には得たモノのほうが多かった。
友人、新しい知識、技術、それに対する好奇心。
すべてが新しく新鮮で。




楽しくて。




ニコルはまだ本当のことをなにもしらない。















***






「ラスティとミゲルがどうしてっ…!!」


常の姿からはあまり想像の出来ない彼の姿をどこか別の場所から見ているような気分だった。




現実味が、無い。




現実、現実とは何だろう。
まるで硝子一枚で隔たれてしまったようで。
少し手を伸ばせば簡単に確かめられるはずの彼が、消えてしまいそうで。
そんなことが現実。






すべてのことがうそのようだ。すこしまえ、ほんとうにすこしまえまでとなりにいてかれらはとなりにいて、いまもそのわらいごえやひょうじょう。
すべてがせんめいにおもいだせるというのに。







もういない?




伸ばせない手をきつく握り締める。
流れた血は重力を知らずどこへいくのだろう。












END


07:04
ニコル。ニコイザチックに。雰囲気だけ。
【11:夢の終わり】


2004.10.11-Copyright (C)Baby Crash