「フレイの髪は薔薇の色だね」




昔、本で見た薔薇を思い出したから何となく彼女にそう言った。
薔薇が持っている豪華な雰囲気がフレイに似ている。それにフレイの髪は実際、薔薇の色だ。キラは褒めたつもりだった。
けれどもフレイはその言葉に眉をひそめて言う。




「私バラの花は嫌い」


そうか。とキラは少し寂しく思った。けれども彼女の機嫌が本格的に損なわれる前に「ごめんね」と謝った。
彼女はとても気難しい。二人で過ごせる時間は少ないのだから少しでも笑っていて欲しかった。


それでもフレイは言葉を続ける。


「あんな細い茎の癖にとげばっかり多くて厭よ。脆いくせに棘なんていう武器を持っているから群れる必要なんて無いと言う様に一本だけで咲いちゃって」




フレイは言葉を吐き出した。




「まるでキラみたい」


キラはそのとき薔薇に棘があることを初めて知った。本では写真だけしか載っておらず詳しいことは何一つ知らなかったから。
棘はきっと弱い花を守るためだろう。花は薔薇にとって大切なものだ。大切なものを守るために武器を持つ。






なるほど。僕に似ている。






話題にすっかり興味をなくしたフレイが寝ましょうと声をかけた。
それでキラもこの話題を考えるのをやめた。




戦争は明日も続く。
だからきっと戦わなくてはいけない。


(花は大切だもの、ね)


隣で眠るフレイの髪は暗闇でも紅く浮かんでいて、やっぱり薔薇のようだとキラは思った。











18:02

END



...
【08:爛れた薔薇】


2004.10.15-Copyright (C)Baby Crash