どうしようもないことなどこの世にはあふれかえっていた。






















弱いままでいることは死を意味した。
騙されたつもりは無い。自分で選んだ。それが誇り。




母も兄弟も全てを奪った世界で伸ばされた手。
道はそこにしか広がっていなかった。
他に手段など。




ぼやける世界。片目の視力が生まれつき弱かった。色も違う。紫と金。なんて反りあわない色だろうか。
ぼやける世界曖昧な存在は酷く心地いい。




音楽。
施設に来てすぐ、初めて自分から望んだもの。耳を塞いで何も聞きたくはなかった。
女の叫び声がする。イヤホンから?それとも現実?




「シャニ」


名前が呼ばれる。それだけが自分を喜ばせた。
その声がどんな感情を含んでいようと関係ない。自分の存在がそこに示されていればいい。
生きることに固執しているわけではない。飽きてしまえば次の瞬間にだって死んでもいい。
ただ殺されるのだけは厭だった。何を考えているのかわからない白衣の白しか色を持たない研究者などに殺されたくはなかった。
死ぬのはかまわなかった。ただ殺されるのだけは厭だった。




誰 
  だ
    っ
      て
   そ
     う
       だ
         ろ
           う
             ?





目を閉じれば闇が広がる。一番嫌う金も紫もそこにはない。
闇。黒。なんて便利な色だろう。
塗りつぶす強さを持つそれこそ光だ。


何もかもが終わってもしも自分が生きていたのなら。
世界が闇で覆われて。色など忘れて哂っていたらいい。




そんなことを考えていた。






(そうでもなければこの世にはどうしようもないことがあふれかえっているのだから)












END


7:18
シャニ。馬鹿ではなく。
ただ言葉にできないことが多すぎただけだと思います。

【06:極彩色の悪夢】


2004.10.11-Copyright (C)Baby Crash