なんか、くっついちゃった、らしい。
数日前まで実にギクシャクとして物々しい雰囲気すらかもし出していた友人二人が今朝は打って変わって穏やかな表情で笑いあったりなんかしている。むしろ穏やかっていうか正直鬱陶しいなぁ、なんて自分の朝食の乗ったトレーをぼんやり突付きながら二人の様子を監査する。バランスの取れたAセットより初々しい恋人達の様子の方が大切でしょう。
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妙に真剣な、思いつめたような顔でシンがルナマリアの元を訪れたのは三日前だった。感情が顔に出易いタイプだとは思っていたけれど今回はそれが余りに顕著でさすがのルナマリアも慌てた。ここに来るまでに相当自分でも悩んだのか思い余って自傷にでも走りそうな彼を必死で宥めて話を聞き出せば一言。
「恋って辛い」
正直殴ってやろうかと思った。
まぁ彼の話を意訳要約すると、「アカデミーから同室でいろいろ世話を焼いてくれた金髪美人のレイを見るとドキドキして仕方ない。恋だって自覚したらもっと辛い。どうしたらいいだろう」
まるで中学生のようなたどたどしい告白に聞いてるこっちが恥ずかしくなってシンと二人顔を赤くしてしまった。それでもレイのことを語るときのシンがとても満たされた幸せそうな目をしていて微笑ましいなぁと笑ってしまう。一年前初対面で全ての希望を手放し諦めたような色をその目に映していた彼がこんな風に人を思えるようになるなんて想像も出来なかった。友人の幸せが素直に嬉しい。恋愛とは美しく有るべきだ。それがどんな歪な形でも人を思う心は変わらず美しい。その証拠に彼はこんな優しい顔ができるようになった。ルナマリアがシンを止める理由なんて何処にも無い。ただ無理強いだけはしないように、と釘を刺して笑顔で部屋からたたき出した。蹴りだされたシンが抗議の声を上げてるけどムシムシ。正直相談されてるというより惚気られていた気分だったから、これくらいは良いでしょう。
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自分の思考にふけっているといつの間にか自分の朝食をトレーに載せた二人が前までやってきていた。今まで一緒に食べていたから自然といえば自然なんだけど事情を知ってるこっちとしては少し悪い気もする。お邪魔じゃないかしら。ていうかカップルの間にいるのは痛い。確認の意を込めてシンに目やれば口パクで「ありがとう」と言われる。なんか違うけどまぁいいか。急によそよそしくされた方が悲しいし。一人納得して少し冷めた朝食を頬張る。冷めた紅茶にレイが少し変な顔をしていたけれどまさかあんたたちを観察してましたなんて言えないから笑顔笑顔。きにしないで。
END
【ハッピーエンド】
2005.11.30-Copyright (C)Baby Crash