いかにも自分は小物です。と体全体で表現しているような地位だけはムダに高いオヤジがにやにやと汚ったない笑いを浮かべて不躾な視線をレイに送っている。ホントどこにでもいる典型的な腐敗軍人だ。オレがこの場にいなかったらこのおっさんとっくに犯罪者じゃないだろうか。おいこらドサクサに紛れて手を伸ばすな。レイは気にしないように努めているけれどそれが余計相手を助長させているように思う。正直殴りたい。オレはこの先のことを考えて顔には笑顔を貼り付けてみたけど正直頬が引きつっていた。というかこんなときにまで先のことを考えてる打算的な頭に酷い嫌悪感を抱く。こういう時こそ助けるのがオレの役目なんじゃないの。なんで黙って見てる事しか出来ないんだよ。立場とかこの先とか考えないくらい子供だったらよかったのに。そうすればオレは何も悩むことなくレイをこの場から連れ出すことが出来た。 ようやく全ての案内が終わってここに居る理由も無くなる。名残惜しそうなオヤジに何か言われる前にレイの手を取って無礼にならないよう一応形だけの挨拶をして背を向けた。一刻も早くこの場から逃れたくてレイが後ろで戸惑ったような声を上げたけれどムシ。そのまま部屋まで帰ってドアのロックが掛かったことを確認して漸く手を離した。向き合ったけど目を見る勇気が無くて肩口に顔を埋める。戸惑ったようにそっとレイが触れてくるのが気持ちよくて目を瞑った。胸の痛みがスッと引いていく様な心地よさ。 できることならレイと、二人で。二人だけで一生こうして居たいんだ。 ごめん、一言だけ吐き出した言葉にレイがどんな顔をしたのか、オレは知らない。あやすように背を摩る手が暖かい。最後にレイの名を呼ぼうとして、やめた。








END




【05:なに?…この胸の痛み】


2005.07.04-Copyright (C)Baby Crash