成り行きでここに転がり込んだのは良いけれど目標をなくした自分は非常に無気力でダメなヤツだった。力を得て守りたいと思ったものは既に無くした後だったからここにいる意味が見出せない。それでもここに居たのはただ他に行く所を見つける気力すら残っていなかったからだ。
そうは思っても無気力でやる気が無いのだから成績は散々たる物だった。実技はともかく筆記はまったくやる気が無かったので単位0。実技だけなら希代の秀才なのに!と影で教官たちが嘆いていたのをオレは知っている。オレの実技に期待した教官たちはどうにかしてオレに筆記をパスさせたかったのだろう。苦肉の策として同期で一番成績優秀者に面倒を見るように押し付けた。
「まぁ運命ってヤツだよね!」
「いいから次。180ページ問い2から」
満面の笑みを向けてもすっぱり切られる。めげない。だいぶ慣れたもんだ。最初顔と名前を一方的に知っているだけだったレイに勉強を教えてもらえと言われたときは正直死にたくなった。迷惑だと思ったのだ。オレをレイに押し付けて去ってゆく教官に呪いかけながら「ゴメンな…」オレ一人でやるから、と力なく言えばそれまで表情一つ変えなかったレイが「気にするな」と緩く表情を崩して微笑んだ。
それからはもう成績うなぎ登り。あっという間にレイに並ぶほどにまでなった。
「なんでやれば出来るのにやろうとしなかったんだ?」
「だってほら目標がなきゃやる気ってでないでしょー?」
「目標?出来たのか?」
珍しくレイが興味を示してくるけれど詳しく教えるわけにはいかないので笑って誤魔化す。そうすればレイはムリに聞き出そうとはしない。そういう踏み込まない優しさにオレがどれだけ救われたか。いつか全てを話そうと思う。目標は君。目指していつか必ず追い抜いて、守る。
「目標を見つけたオレは強いよ!レイも守っちゃうから!」
「あぁ期待してる。頑張ろうな」
だいぶなれたけど不意打ちのレイの笑顔にはいつまでたっても敵わない。精進します。
END
【03:気になる人が出来ました】
2005.09.21-Copyright (C)Baby Crash