08藍色、この場所、月の下


ぽつんとひとり途方にくれたように座り込んでいる彼を見たとき安心して力が抜けた。傍で遊んでいたはずの彼の姿が見えないことに気づいたのは随分前のことで、辺りはすでに夕闇に包まれ始めている。日が落ちきってしまう前に見つけられてよかった。彼はまだこの辺りに詳しくないからたった一人で不安だっただろう。安心させたくて早く一人出ないことを知って欲しくてスザクは駆け出していた。
名前呼ばれて振り返った彼がスザクを見たとたん一瞬泣きそうに表情を緩める。けれども涙が流れることはなく、ルルーシュはきゅっと眉を寄せて不機嫌さを装いスザクに「遅い!」と拗ねてみせた。そんな強がる表情にすらも彼が居る幸福を感じてしまう。帰ろうか、そうして差し出した手を迷いなく握ってくれる彼を何よりも愛しいと思った七年前の帰り道。


(あのころの彼は大人しくって本当に可愛らしかったなぁ。何をするにも僕の後を恐る恐る付いて来て)(だからこそあの時は驚いた。まさか振り返って君が居ないなんて思わなくって焦ってそれで)(あの道は今でも残っているのかな)


久しぶりに共に歩く夕闇迫った道に思いかけず幼いころの記憶が蘇って何となく優しい気持ちになった。この気持ちを彼とも共有できればいいなと思うのだがスザクはルルーシュが幼いころの話を持ち出すと照れ隠しに怒り始めることを知っているので口をつぐむ。訝しがる幼馴染には曖昧に笑って返して。
(どうかこの瞬間も愛しい思い出として振り返るとき、また隣に君が居ますように)