04名もない恋心


ルルーシュ君だ、と父から紹介されたとき確かにスザクの心臓は高鳴った。けれどもすぐに彼の悲しそうな瞳の色が気になって心臓の音なんて気にならなくなってしまった。悲しい顔をして欲しくないな、何故だかそんな風に思った。彼とは初めて会ったばかりなのに。
それから毎日一緒に居て、彼も自分と同じように笑ったり怒ったりすることを知り(だって彼は人形のようだったんだもの!)妹を最愛のものとして扱う心を持っている優しい少年だと理解した。悲しい瞳も、今ではすっかり影を潜めている。でもどうしてもスザクの心は変なのだ。


(僕ルルーシュを見てるとドキドキして仕方ないんだよ)(ナナリーにばかり話しかけているのも本当は少し嫌なんだ)(でも同時に君が笑っているととても嬉しくて泣きたくなるよ)


今もまた妹に今日の出来事を熱心に話している彼を見ていると胸の奥がモヤモヤしたりする。こんな変な気持ちは知らないんだ。(僕が僕じゃなくなるみたい)


(そうして数年後、この気持ちは懐かしい思い出と共に蘇り、スザクは頭を抱えることになるのだがそれこそ今知るところではない)