03少年少女、幸福論


何も持たぬこの兄妹こそがスザクの知りえる最も優しい幸福の形であることは七年たった今でも変わらない。光を失った彼の妹に再び見舞えたときは未だ開かぬ瞳に少しの悲しみを感じたことも事実だったが、其れよりも彼女の変わらぬ優しさのほうに感じる喜びが大きかった。彼女がこんなにも心優しく成長したのは他ならぬ彼のおかげなのだろう。それが何故かとても嬉しい。彼は妹を護ることができたのだ。彼らはお互いが居続ける限り絶望に沈まずに済む。ならばどうかもうこれ以上彼からは何も奪ってくれるな。彼ら兄妹に幸福が降り注ぎ続けますように。そしてできるならば其れを傍で見届ける権利を自分に与えてほしい。それは祈りではない。誓いだ。神はあの日に死んだのだ。ならば自分が護ってみせる。今度こそ彼の世界を。そうして彼が微笑んでいてくれるのなら、それが自分にとって唯一残された幸福の場所なのだろう。