スザクはルルーシュの手を取って走りだした。どうしたんだ?突然のそれに驚きつつもスザクの危機迫る様子に逆らえず走りながら尋ねれば、バレたんだとスザクは言う。バレた?うん。君のお兄さんとかに。
サラリと言われた「お兄さん、」の言葉にひぃ、っと引きつった声がでた。それは嫌だと情けなくも動揺したがスザクは振り向かずルルーシュの手を握ったまま加速してゆく。ああそうだな逃げなきゃな。ルルーシュも我に返り引かれる手のまま足を動かす。運動神経も抜群で、そのうえ正規の訓練まで受けているスザクは早い早い。が、ルルーシュの足は悲しいかなそんなに早くは走れない。しばらくして直ぐに息が切れ心臓がおかしな早さで働き始めるがスザクは止まらない。止まれない。ルルーシュも待ってくれとは言えなかったので引きずられるようにしながらも辛うじてスザクに付いていく。ルルーシュの耳にはまだ遠く、しかし確実に後ろから自分を呼ぶ声が聞こえている。




止まれ!止まりなさい!お兄ちゃんだよ!




誰がお兄ちゃんだよ。げっそりしつつも内心のツッコミだけはかかさない。チラと目だけで後ろを伺えば予想通りの金髪とそれより前を濃淡の違う桃色が二つ走っている。情けなし男性人。軍人であるコーネリアはともかくユーフェミアなどドレスのままだというのに。自分の貧弱さを棚にあげルルーシュは男兄弟の非力さを嘆いた。




待って、ルルーシュ!待てルルーシュ!止まれ!




ユーフェミアの声は下手をすれば泣き出しそうにも聞こえたしコーネリアの呼び声も珍しく必死だ。根がシスコンであるルルーシュは自分が原因で女兄弟にあんな声を出させていることに言いようのない罪悪感を感じて戸惑うが、それを敏感に察したスザクの、まさかほだされてるんじゃないよね、と言う固い声に我に返る。前を行く彼の背に黒いものが見えたのは気のせいだろう。そして後ろから、余計なことを!とスザクを罵る声がユーフェミアから聞こえたのもきっと何かの間違いに違いない。しかも舌打ち付きだなんてあのユーフェミアが。まさかまさか。




枢木スザク!命令だ!止まれ!ルルーシュを返せ!




とうとう焦れたコーネリアが叫ぶように言ってシュナイゼルとユーフェミアが、そうだそうだ、と声をあげる。しかしスザクは止まらない。皇族命令を堂々とガン無視のスザクにさすがのルルーシュもヤバイんじゃないかなと思いつつやはり足は止まらない。




何でお前は俺を助けてくれるんだ?




気持は物凄く嬉しかったけれどそれでスザクの立場(どころか冗談抜きで生命まで)を危険に晒してしまうことは本意でない。息を切らしながらも必死で問いかけたルルーシュにスザクは走るスピードを全く落とさずあからさまに怒った顔でルルーシュを振り向く。そして怒鳴る。




そんなの君が好きだからに決まってるだろ!!




瞬間ルルーシュの思考は停止する。なんだって?今この男はこの状況でなんと言った?もしかしなくてもスザクの言葉は明らかに愛の告白だったが状況の非常識さにルルーシュは理解が遅れる。思考に気をとられ足元がもつれ、転ぶ前に焦れたスザクがルルーシュを抱え上げた。こっちのが早いや、と宣うスザクの体力に感心しつつ、有り得ない。とルルーシュは天を仰いだ。幼馴染みの男に姫だっこされて兄弟に追われている。なんだこれ。オマケにその幼馴染からは愛の告白付きときたもんだ。ルルーシュを抱え更にスピードを上げたスザクはみるみるうちに後続を引き離していく。しかもまだ余裕があるらしく微笑みつつこんなことを言う。




ルルーシュも僕のこと好きでしょ。




もはや疑問系ですらない。ジーザス!!





















バレた!