「ほら、こっちのケーキも美味しい」
「もう!そんなに食べたら太ってしまいます!」
可愛らしく抗議するユーフェミアに微笑むルルーシュ。なんて平和な光景だろうか。スザクはこの場に居合わせることができたことを感謝する。ナナリーに対して接する時とは又違ったルルーシュの優しげな表情はそう見られるものではない。どちらがどれほど、と比べる気もないがやはり好きな人が笑っているのを見るのは良い物だ。それだけで今日はいい日だったと言い切ることができる。
「あ、ルル、クリーム付いてる」
「え」
「あらあら」
もちろん自分に対して彼が見せる無防備な表情も愛しい。スザクの声に振り返ったルルーシュの口元についていたケーキの生クリームを指で拭いそのまま自分の口へもってゆく。甘いね、微笑んでみせれば彼は照れるでも怒るでもなくスザクに対してそのケーキを勧めてくれた。ああ世界はなんて平和なんだろう。ルルーシュはユーフェミアを妹として愛しているしユーフェミアも(多少歪んではいるようだが)兄を敬愛している。もちろんスザクは二人のことがそれぞれ違った意味で大好きで大事だ。そうだ僕はルルーシュを愛している!そのことを思い自覚するたびにスザクは彼女に感謝した。もしあの時ユーフェミアが自分の感情を暴いてくれなかったらきっと今こんな気持ちで此処にはいられなかっただろう。きっと自分は醜い感情に溺れてしまっていた。彼女としては想定外のことだったかもしれないけれど結果的にこんなにもいい関係を築くことができた。僕らはとても幸福じゃないかと素直に思えることが嬉しい。
本当にありがとうユーフェミア!(よくよく考えなくても末恐ろしい少女だ。博愛主義のフリをした偏愛主義者。そうだ僕らよく似ている)既にルルーシュは僕のもので僕はルルーシュのものであるから君の願いを叶えることはできないけれど安心して欲しい。君のお兄さんは僕が貰い受けたのだ責任を持って幸せにする。
その誓いに偽りなどないけれど、ふと目があったルルーシュに満面の笑みを向ければ彼は不思議そうにしつつも微笑み返してくれる。単純なことだけれどそれで胸に湧き上がるこの気持ちを幸福と呼ぶのならスザクはこれ以上のものを知らない。スザクを幸福にできるのはルルーシュただ一人だ。結局のところ、一番幸せものは自分なのだろう、そう思うスザクはこの場にいる全員が同じ事を考えていることを知らない。
(でもこの茶会に彼女がいるのは今日だけでありますように!)