弱っている人間というものは見ていて気持ちの良い物ではないな。浮かんだそれは酷い考えだとは思うが事実なのだから仕方ない。目の前であからさまに沈み込み浮上する様子の無い人間はただ鬱陶しいだけだ。まだ開き直ったり自分は悪くないとあがき続けていたほうが楽だろうに、お前は事実を否定せず全て一身に非難を受けた。まさかあの少女も縋った相手が憎い敵だとは思いもしないだろう。それゆえ真実悲しみだけを伝えた言葉と涙は簡単に彼の決意を打ち砕きそうになる。修羅の道、お前はそう言ったろうに。項垂れて力のない瞳を見ていると苛立ってしかたない。私が見たいのはそんな顔ではないと知っているだろう。何のために私がお前に力を与えたと思っているのだ。生きる理由、お前のそれはそんなにも簡単に崩れ落ちるほど脆く勝ちの無いものだったのか?それでは私の此処にいる、如いては生きる意味が無くなってしまう。


(そんなのは、嫌だ)


死という概念をなくした自分にとって今恐ろしいのは唯一つだけだ。生きるための理由、それを私から奪うのは例えおまえ自身だって許さない。


そして我慢ができずにまるで詰るように彼を追い詰めた。言っているこっちが酷く嫌な気分になる言葉を全て彼へぶつけた。常の彼ならば直ぐにこちらの意図に気づいてこんな意味の無い言葉になど乗ってこなかっただろう。しかし憔悴しきった彼は裏を読むことなど忘れてしまったかのように簡単に逆行しそして私の言葉で無防備に傷ついた顔をする。そうだそれでいい。お前は私にとってどんな存在なのかをそろそろちゃんと思い知るべきなのだ。失望させるな。この言葉には全てが込められている。










壁を叩く鈍い音が響いていて彼の憤りを知る。嗚咽は聞こえないので泣いているのかは分からなかった。けれどそれでいい。私はお前が縋るべき場所ではない。そんなものは彼が言う大事な友人にでもくれてやる。彼の生きる理由があの優しげな妹だって構わない。ただ私はお前を動かす感情の欠片になりたかった。そこで向けられる感情が憎しみだって構いはしない。ただ立ち止まってくれるな。どんなに無様だろうと前へ進み続けろ。(そうして私へあの美しい紫紺と紅蓮の瞳を見せておくれ)それだけがただ私に惰性の生を受け入れさせる理由になる。私は死なない。だからお前を孤独にしない。


ただそれだけお前は知るべきだ。














私はお前のでいい