「ルルーシュは私の共犯者だ。私が守る。お前からも、な」
高慢に、まるで人を一段上から見下しているような言い方をする女だった。その上言っている内容が気に入らない。最悪だ。黙れよ。心の中ではき捨てた。
守る?ふざけるな。そもそも全部お前のせいじゃないか。お前が彼に接触しなかったら事態は此処まで悪くなどなって居なかった!彼はまだ幾らか残っている学生生活を緩やかに楽しみ、妹を慈しみ心休まる時を過ごせていたはずなのに!
何が王の力だ。お前は与えるフリをして彼から全てを奪って言ったんじゃないか。僕は彼と彼の妹が安らかに過ごせる世界をという願いの元で軍に入ったというのに。彼を危険な目になど遭わせず、ただ妹と二人幸せになって欲しいと願っていたのに。
お前は僕からも全てを奪っていった。願いも、生きるための理由も、何より大事な人も!
「お前を、殺してやりたい」
初めて音になったその感情に一瞬彼女は驚いたように目を見開いたがすぐに愉快そうな笑みを浮かべる。その表情すらいちいち気に食わなくて爆発しそうになる感情を抑えるのに必死だ。
殺してやりたい。こんな明確に殺意を持ったのは生まれて初めてだ。今すぐに自分の目の前から消えて欲しい。出会ったことすら忘れてしまいたく、できることならこの手で息の根を止めてやりたいとすら願う。今までどんなことがあったって此処まで激しい感情の動きなど無かったのに。彼女の手中に自分の大切な彼が居ると考えただけで!
「面白いことを言うな」
「不愉快だよ。とてつもなく不愉快だ。君と話していると本当に苛々する。ルルーシュを返せよ。」
「返せ?何を言うかと思えば。アレはお前のものか?」
「僕のものだよ」
「お前はアイツの手を離したくせに!」
初めて女は感情的に叫んだ。恨みがましい、という表現が似合うような目で僕を睨む。何でお前ばかり!僕にはそう訴えているように見える。そうだ、それは純粋な嫉妬を含んだ瞳だ。
「…ねぇ。うらやましい?」
「!」
確かめるために問いかければ瞬間女の頬が羞恥と屈辱に赤く染まる。それを見て全て理解した。女は彼に焦がれている。
(いつも傍に居たのは私なのに!どうして最後の最後で私を選んでくれない?!)
「彼は君を選ばないよ。もし僕が彼を抱きしめて許しを請ってずっと傍に居るよ護るよ、と誓ったら彼はどうするかな」
その言葉には過去に裏づけされた自身と、確信があった。彼は絶対に僕を選ぶ。だって僕は彼の大事な親友なのだ。幼い日々を共に過ごし頑なだった心を妹意外に唯一開いた相手。そんな僕に彼が縋らないはずが無い。女もそれを痛いほど理解しているのだろう。絶望に瞳が染まり始めるのをどこか清清しい気持ちで見ていた。
(彼は、僕のものだ)
それを君に教えてあげるよ。