口元は緩く孤を描いて、首は少しだけ横にかしげ、声は穏やか。上品な生徒会副会長。みんなの王子様。(これは少し洒落にならないかな)




くるりとペンを指先で回しながらぼんやりと考える。でもこれが多分みんなの言う、ルルーシュの”笑顔”なのだ。(でもさ、)一体何人の人間が、ルルーシュのその”笑顔”が、目は細められてるだけで色が抜けてるとか、声の穏やかさは妹の前には欠片も及ばないことを知っているのだろうか。
視線の先にはクラスメイトと話している彼が居て、その彼の表情が懐かしい表情だったからスザクは思わず凝視してしまった。再開して間もないとはいえ今まで目にしていなかったのでもうあの笑い方は止めたのかと思っていたのだけれどそうではなかったらしい。
彼の本当の笑顔はごく一部、近しいものだけに向けられる。スザクに対してだって、今でこそ屈託なく笑うようになってくれたけれど初対面のころはあんな顔ばかりだったのだ。それを長い期間彼の傍で頑なな心を根気よく開いていってようやくスザクは笑顔という権利を手に入れた。苦労して(と、実際感じたわけじゃないけれど)手に入れたそれを誰にでも安売りされていないのは無条件で気分が良い。だってルルーシュの心からの笑顔は本当に可愛らしいのだ。アメジストの目は優しく細められ、口元は喜びや親愛を隠しきれないように綻ぶ、学校では聴いたこともないようなとびっきり優しくて甘い声で名前を呼んで彼は微笑む。嬉しくてたまらない、幸福でたまらない、そんなとき彼は少し困ったように眉を下げて微笑む。それはまるで泣き出してしまう一瞬前の表情のようだ。
鮮やかに浮かんだ思い出の中のその表情にひっそりと笑みを浮かべる。思い出し笑い、なんて少し趣味が悪くなったかな?なんて幼馴染に言えばきっと飛び切り嫌な顔でスザクを見てくれるだろう。
そんなことを考えていると、話を終えたらしいルルーシュがこちらへ向かってくるところだった。その表情に先までの貼り付けたような笑顔はなく只少し疲れたような無表情の中に、愛想笑は疲れる。と浮かんでいるように見えて苦笑する。どうすれば君はまたあんなふうに笑ってくれるかな?その視線に気づいたルルーシュと目があう。一瞬のうちにルルーシュの無表情が崩れて、ホッとしたような顔になった。それにスザクもにっこり微笑んで返す。その笑顔にルルーシュが少し呆れたように笑うけれどスザクは彼がこの笑顔を喜ぶのを知っている。


(これだってある意味計算づくかな?)


それだって良い。何の問題もない。スザクの望みは彼の平穏で、それ以外はさしたる問題ではない。(ねぇルルーシュ)(抱きしめてキスして好きだよって言って)
そうしても君は微笑むかな?








考 え れ ば 
分かること