黒の騎士団、と彼らは自らをそう表した。くろのきしだん、声には出さずに唇の動きだけでもう一度その形をなぞる。滑稽だ。何もかもがスザクの意思には沿わない、くろのきしだん。
スザクはそれを独善的、と評す。どんな理由付けをしようと、そこにどんな正義があろうと、法に沿わない断罪は悪でしかない。(正義の味方?不愉快だよ。ゼロ)
大衆の目の前で声高にそう言った黒い仮面の男を思い出して思わず眉をひそめる。彼は駄目だ。彼はスザクの近しい、大事な人に似ている。そう考えて彼らをイコールとすることも嫌なのにそれを認めざる得ない。似ている?まさかそんなことがあってたまるものか!彼は、大事な彼はあんなことを望まない。確かに彼は自分の故国でもある大国を怨んではいるけれど、彼が望むものはそんなあるかも分からぬ正義などではなく、妹とのささやかな幸せだと信じている。
(そのために、僕は)
守らねばならないのだ。彼を、彼らの平穏を。
離れてしまっていた七年間でさえスザクはそれを実現することを願ってどんなことにも耐えてきたのだ。再開した今、何をためらうことがあろうか。
自分には確固たる信念がある。弱者の味方?そんな偽善のような言葉は吐き気がする。(僕は、彼だけの味方だ)何度だって考える。心を閉ざしていた彼が始めてスザクに対して微笑んでくれた日のことを何時だって何度だって思い出す。共にすごす時間が何よりも大事だった幸福の日。一生をかけて彼を守ろうと誰にでもない自分自身に誓った。プライドも家族も捨てて、彼のことを守る力が欲しくて軍に入った。だから。
(だから必ず)
この手でゼロ、お前を殺してやる。